アメリカで何やってんの? その1

etorofu2006-02-01

卒業間近ですが、お題そのままに留学生活の少しちゃんとした報告なんざ突然したりしてみます。不定期連載の第一回目は、択捉がどんな学校に通ってるのかということから始めたいと思います。留学希望者にも役立つように進めたいとか思わなくもないけど、あんまり一般的な話をすると本屋行けよということになるので、僕個人的な話、もしくは僕の通っている学校ならではの話を中心にしていきたいと思います。




公共政策大学院って何?
とある公共政策大学院↑の2年間のマスター・プログラムで勉強しています。ここを卒業すると僕は「公共政策管理工学修士」という何だかよくわからない名前の学位を取得することになります。まず、公共政策大学院って何なの?ということですが、ちゃんとした学問定義を述べるのは面倒くさいし、そもそも曖昧なのでここではしません。今は「政策について勉強すんだなあ」くらいに思っておいて下さい。当たらずとも遠からずです。おいおい雰囲気が掴めるようしていきます。学校の種類としては大枠で、MBAなんかが取得できる経営大学院等と同様にプロフェッショナル・スクールに分類されます。プロフェッショナル〜とは、就職、キャリア・アップを念頭に置いた学校で、その対極には研究者の養成を目的としたアカデミック・スクールがあります。政治学修士 (Master of Political Science) や国際関係学修士 (Master of International Relations) は、その学位名から一見、公共政策修士に近いように思われるかも知れませんが、上記の分類では二つは研究者の養成を目的としたアカデミック〜に入る学位で、公共政策とは性格が全く異なります。日本ではこの分類はすごく曖昧でほどんど意識することはないかも知れませんが、アメリカではかなりはっきりしています(完全に分かれているわけではありません。公共政策博士という道もあります。)。僕は出願するときこの辺に関する知識が怪しかったので、今から思えばかなり危ない橋を渡っていたなあという気がします。これから大学・プログラムを決める人は気をつけましょう。



公共政策管理工学修士
僕の所属するプログラムは英語ではMaster of Sci*ence in Pu*blic Po*licy and Manage*mentといいます。これはぶっちゃけ珍しい学位です。普通、公共政策修士のプログラムで工学修士(理系)というのは有り得ません。Master of Public PolicyやMaster of Public Administrationという学位(文系)が一般的だと思われます。なぜ公共政策で工学修士が可能かと言うと、それがうちの大学の特色だからということなのですが、僕の在籍するプログラムがかなり数量的分析方法(Quantitative Methods)を勉強することにフォーカスしているからです。


ここで言う数量的分析方法とは、統計学、経済学、財務会計計量経済学、マネジメント・サイエンス*1などです。僕がこの学校で好きなところは、こういう方法論に特化したところと、その裏返しとして気持ちいいくらいにアカデミック系の授業がないこと。公共政策とはなんぞや、なんてことは気にしません。テクニック重視、倫理軽視。そして必然的に、International RelationとかInternational Developmentなんかの「国際系」の授業もないドメスティックに特化したプログラムとなっています。取りたかったら隣の大学で取れということらしいです。

この前、学部のミーティングである学生が「ここは分析手法とかばっかりでアカデミックな授業とか国際的なことに目を向けてない。」って文句を言ったら、別の学生が「そんなん意味ないし。俺ら工学修士だぜ、数量的なこと勉強しに来てんでしょ。俺はそういううちの特色に満足してるよ。」って言い返してました。そしたら学部長が後者の学生に「I wanna kiss you!」って。周りも拍手してたし。


うちの大学は日本での知名度はすげー低いけど、アメリカではそこそこ良い大学として通っててw(たぶん。親にそう説明して学費だしてもらいました。)*2、IT・工学部系とかMBAが有名なんだけど(公共政策も悪くないです。)、如何せん国際開発とか世界平和とかに関心がないもんで、国連業界とかの人には全然売れてないみたいです。去年カンボジアインターンしたときとか「へー、確かニューヨークにそんなミュージアムあったよね?」みたいな感じでした。でもアジア開発銀行のインド人の方々には「いい大学行ってるじゃないか!」って言われました。インドではかなり有名らしい。そんな大学。

*1:意思決定に関わる判断材料を可能な限り数量化して捉え、利益最大化につながる合理的な判断を導き出すことを目的とした学問。例えば、航空会社の利益最大化行動の一つとして、“できるだけ満席に近い状況で飛行機を飛ばす”というものがあるとする。航空会社はあらかじめキャンセルを想定してダブル・ブッキングを意図的に作り出すわけだが、実際にダブル・ブッキングが発生するのは避けたい。マネジメント・サイエンスはこうしたニーズに応えるため、 “キャンセル≦ダブル・ブッキング”が0.1%以下(任意の値)の確立でしか起こらない”意図的なダブルブッキングの許容値”を統計的な分析によって導き出す。他にも、利潤最大化のための、投資額・時期の判断、在庫管理、コールセンターの電話係の数、運送経路、等々、様々な分野で使われる。オペレーションズ・リサーチとほぼ同意。

*2:2005年度BestGraduate Schools, Wall Street JournalMBA部門ランキング2位、U.S.News誌 Policy Analysis部門ランキング4位、同誌IT Policy部門ランキング1位。ただ、こういうランキングはあまり鵜呑みにしていいものではありません。例えば、順位だけ見るとMBAではウチの大学の上はハーバードしかないし、Policy Analysisならハーバード、スタンフォード、UCバークレーの次がウチということになってしまいますが、一般的に言ってウチよりいい大学はいくらでもあります。だまされちゃイケナイ。もちろん得意分野を絞ればいいとこ行くと思うけど。以上、宣伝でした。