フィールド・トリップの報告 その4

etorofu2005-07-12

感想・考察 その2 〜諦観と依存の妙な共存〜
視察の話からは遠いところにきています。

「どうしようもないけどやるしかないよね」というのが結局今の開発の世界の現状なんだけど、みんなやるべきことはもうだいたいわかってるし、かなり色んなことについて議論もしてきた。もちろん、「開発とかじゃなくてフェアトレード実行するだけで、こないだのG8の債務帳消しの4倍の効果がある」とか「そもそも全ての国が経済発展してグローバル化を進めなきゃいけないのか」とか「てか教育って何?必要なの?」とか根本的な議論はまだまだ続けられるべきで僕も興味はあるけど、ここではちょっと置いとく。

進むべき方向性がわかっているときに考えなきゃいけないことは、誰でもわかることだけど、どれだけ効果的にかつ効率的にやるかということだ。もちろんこういうAdministrativeな面での国連改革とかって僕が物心つく前くらいから散々言われてきたし、「営利企業のやり方をもっと取り入れて」とか今じゃほんとに何の新鮮味もない言葉になってる。でも僕がこっちに来て感じたのはまさに「あー、この人たち正しい方向に向かってるってだけで満足しちゃって効率性とかアプローチの工夫とかに対する腐心が全くないのね」ってこと。改革が遅れてるとか、そのひずみがどうの言うレベルじゃなくて、危機感そのものがない。特に経常収支に対する意識が異常に低くて、国連みたいにでっかい機関を維持していくだけで年間どれだけかかってんのかとか時間を節約するだけで同じお金でもっとたくさんのことができるとか全く考えてない人が多いような気がした。学歴インフレとか言われるこの業界でこれかーって感じです。みんな頭はいいはずなのに、、これにはほんと愕然ときた。

そして個々の機関の非効率性に加えて見えてきたのが業界全体としてのまとまりの無さというか風通しの悪さ、言い換えるならば意思決定ラインと責任の所在の不明確さで、これはaid community(国連やNGOなど開発に関わる外部団体)に蔓延する諦観と依存の相互関係を生み出していると思う。様々な国の政府系機関や国連機関、NGOが入り乱れているこの業界において意思決定ラインと責任の所在の不明確さは宿命ともいえる。そうした中で漠然と存在する「国連は政策レベル、NGOは草の根レベル」みたいな住み分けは両者の意思疎通と一貫性を阻害して、この諦観と依存が共存する奇妙な相互関係をaid communityにもたらす。

NGOは国連など大型の援助機関に対して「あいつらはどうせ草の根レベルのことを全然わかっちゃいない」といいつつも、じゃあそういうデカイところに政策レベルでどうサポートしてほしいのかという具体的な要求をつきつけることがなく、「まあ政策レベルのお話は私らの出る幕じゃないし」と妙な身の引き方をする。その逆もまた然り。少し抽象的になってきてしまったけど、サマキ2を視察して感じた閉塞感の源はここにあると思う。

例えば、サマキ2の意見交換会で、識字教育の学習のインセンティブになるようなものとしてクメール語の初級レベルのスキルトレーニングブックが必要だという話になった。僕はその時、「じゃあそれはユネスコのNon-formal教育部門の次の仕事ですね。」とCAREとUNESCOの人に振ったんだけどユネスコの人は「うーん、多分ね、、。」って感じで、CAREの人は「それは私たちの口からは何とも言えない。」という反応だった*1。こういうのってほんとにダメだ。別に権力関係があるわけじゃないんだから、「俺んとこは今こういうニーズがあるんだけどウチの団体には少し荷が重い。おまえんとこはこういうの得意なんだから来年までにこういうのやってくれよ。」ていうのは普通にあっていいと思う。お互いに期待を裏切り裏切られつつも常に明確な要求を出していければまだいいんだけど、諦観しつつ結局相手に遠慮/依存しちゃうってのは如何ともしがたい。しょうもない遠慮して困るのは誰なのか考えてほしい。

この問題を解決するのは簡単そうで実はけっこう難しい。諦観しつつ結局相手に遠慮/依存しちゃう人たちに、「ちゃんとやれ」て言っても無駄だからです。構造そのもの、すなわち意思決定ラインと責任の所在を明確にしていくことが必要になる。でもどうやってやんだろこれ。それとも他に方法があるのかな。ここで完璧な答えを書いたら僕はこのままPh.Dに進むってかPh.D取っちゃうことになるので、もう少し考えます。




うーん、、。

*1:実は今関わってる仕事のひとつがまさにローカルのライフスキルを全国的に集めてみんなでシェアするというユネスコのプロジェクトなので、僕の意見が見当違いだったせいでこの時の周りの反応が悪かったわけではないと思う。ユネスコはこういう教材を作ったり提供したりするのが得意。てかユネスコの人はちゃんと自分らのプロジェクトとか把握しておくべきだよな。